
「なんで私ばかり、こんなに気を遣って疲れるんだろう…」
「優しくしているだけなのに、損な役回りばかりでつらい…」
そんなふうに感じることはありませんか?
HSP(繊細な気質をもつ人)の方は、人の気持ちに敏感で、つい相手を優先してしまうことが多くあります。
でもその優しさが、自分を苦しめてしまっているなら、少し立ち止まってみてもいいのかもしれません。
この記事では、「優しすぎて疲れてしまうHSPのあなた」が、自分を守りながら人と関わっていくためのヒントをお伝えします。
- 筆者自身が優しさでしんどくなった経験
- 無理せず断るためのやさしい伝え方
- 自己犠牲を防ぐ3つの考え方
この記事が、あなたが生きやすくなるきっかけになれば嬉しいです。
本記事の著者


HSPとは?【簡単解説】


HSPとは、「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の略で、音や光、人の感情など、外部からの刺激に対して敏感に反応しやすい性質を持つ人のことを指します。
これは「病気」や「障害」ではなく、ひとつの気質です。
つまり、生まれ持った性格の傾向のようなもので、誰かと比べて劣っているわけでもありません。
アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱した概念で、HSPは5人に1人程度の割合で存在するとされています。
ただし、学校や職場など刺激が多い社会では、この繊細さが生きづらさにつながってしまうこともあります。
たとえば、
- 些細な人間関係の変化に気づいてしまう
- 相手の表情や声色から感情を深読みしてしまう
- 大きな音や強い光に疲れやすい
このような特性があるために、人付き合いや職場で「疲れやすい」「自分ばかり気を遣ってしまう」と感じる人が多いのが特徴です。
私自身も、学生時代から「周りに気を遣いすぎる」「相手が怒っていると感じるだけで胃が痛くなる」といった経験をしてきました。



自分は弱い人間なんだな、と思っていました。
しかし、HSPという言葉を知ってから、「これは性格じゃなくて気質なんだ」と納得できるようになり、自分を責める気持ちが少し軽くなりました。
自分はHSPなのでは?という方は、診断付きのこちらの記事を確認してみてください。


HSPな筆者の経験談|優しさで疲れてしまった3つの出来事


HSPの人は「優しい」と言われることが多いですが、その優しさが自分を苦しめる原因になることもあります。
ここでは、筆者自身が「優しすぎて疲れた」と感じた3つの実体験を紹介します。
頼まれごとを断れず、自分の時間がなくなる
私は営業職時代に、職場で頻繁に上司から



「これお願いできる?」
と頼まれることが多くありました。
私もそのたびに、「嫌な顔をされたくない」「相手に申し訳ない」と思って断れずに引き受けていました。
あるときは、かなりの量の仕事を「今日中にお願いしていい?」と頼まれました。
自分の業務が終わっていないのに、それでも「大丈夫ですよ」と言ってしまいました。
気づけば、自分の時間もなくなり、かなりストレスがたまるようになっていました。
優しさからの行動でも、自分を犠牲にしていたらダメです。
「断ること」は冷たさではなく、自分を守るために大切なことだと、後になって気づきました。
他人の悪口で苦しくなる
HSPの私は、職場や飲み会などで誰かが人の悪口を言っているのを聞くだけで、その場の空気に耐えられなくなることがありました。
HSPは共感力が高く、たとえ自分が言われていない悪口でも、相手の立場に立ってつらくなってしまうことがあります。
その場にいない人のことでも、「言われている方の気持ち」を考えてしまうんですね。
私は実際に、仲のいい人が別の人のことを笑いながら悪く言っているのを聞いて、「私もいないところで言われてるのかな」と考えてしまうことがありました。
自分の感情を守るために、距離をとる勇気も必要だと感じました。
HSPは悪口が苦手な傾向がありますが、そちらについてはこちらの記事で紹介しています。


小さなことでも「嫌われたらどうしよう」と不安になる
HSPの私は、人の反応や言葉に対して、深読みしすぎてしまう傾向があります。
例えば、LINEの返信がちょっとそっけない、挨拶したのに目を合わせてもらえなかった。
そういう小さな出来事でも、「もしかして怒ってる?」「私、変なこと言ったかな?」と必要以上に不安になってしまうんです。
実際、仕事で上司がそっけないだけで、「嫌われたのかも」と1日中モヤモヤしてしまうことがあります。
「嫌われたくない」という気持ちは誰にでもあるもの。
でも、感じた不安が事実とは限らないと気づくだけで、少しラクになります。
どうしてHSPは「優しい」と言われるのか?


HSPの人はよく「優しい」と言われますが、その裏では無意識に自分を抑えてしまっていることが多くあります。
ここでは、なぜHSPの人が優しいと言われやすいのか、その理由を3つ紹介します。
共感しすぎて他人の気持ちに振り回される
HSPは共感力が高すぎて、自分の気持ちより他人を優先してしまうことがあります。
たとえば誰かが落ち込んでいると、まるで自分が同じように落ち込んでいるかのように感じてしまう。
それくらいHSPは、他人の気持ちに敏感です。
これは「ミラーニューロン」が関係していると言われています。
脳には、相手の表情や感情を自分のことのように感じる「ミラーニューロン」という神経細胞があります。
HSPの人は、この働きが特に強いと考えられています。
友人の相談を聞いていたつもりが、気づけば自分まで気持ちが沈んでしまったり、しんどくなったりすることもありました。
優しすぎるのではなく、感受性が高いだけです。
「共感する」ことは、悪いことではありませんが、自分の感情と他人の感情の境界線を意識しないと、疲れてしまう原因になります。
「嫌われたくない」が強すぎてNOと言えない
HSPは「嫌われるのが怖い」と強く感じやすいため、つい断れなくなってしまいます。
誰かに頼まれたとき、「断ったらどう思われるだろう?」「冷たいと思われないかな?」と考えてしまい、本当は無理でも引き受けてしまいます。
なぜなら、HSPは「人の評価」にとても敏感だからです。
私も職場でよく頼まれごとをされ、断れずに仕事を抱え込みがちでした。
HSPは優しいからこそ、自分を守るために「断る練習」が必要かもしれません。
衝突を避けすぎて自分の気持ちを表現できない
HSPは、争いや衝突を極端に避けたがる傾向があります。
たとえ意見があっても、「雰囲気が悪くなりそう」「相手を怒らせたくない」と思って、自分の本音を飲み込んでしまうことがよくあります。
そうしたものにHSPは過敏に反応するため、無意識のうちに「自分が我慢すれば済む」と思ってしまうんです。



私は上司に理不尽に怒られたりしても、何も言い出せずつらい思いをした経験があります。
HSPは調和を大切にする反面、自分の気持ちをないがしろにしがちです。
「意見を伝えること=対立」ではありません。
あなたの感情も、大事にしましょう。
HSPが無理せず断るための優しい伝え方【例文あり】


「断ったら嫌われるかも」と不安で、つい頼まれごとを引き受けてしまう
そんなHSPの方はとても多いと思います。
でも、断る=冷たいというわけではありません。
伝え方次第で、相手を傷つけず、自分を守ることができます。
そのまま使える!やさしい断り方の例文5つ
以下に、シーン別の「やさしい断り方」のテンプレートを紹介します。
丁寧だけど主張が伝わる表現を意識しています。
仕事で急に依頼されたとき
「申し訳ありません、今は他の業務で手がいっぱいなので、対応が難しいです。〇日までになら対応できますが、いかがでしょうか?」



今は対応できないけど、別の日程までならOKだということを示そう!
プライベートで誘いを断りたいとき
「声をかけてくれてありがとう。ただ最近ちょっと疲れ気味で、今回は参加が難しいです。」



体調が悪いと伝えてしまうのがいいかもしれません。
ちょっとした頼まれごと
「ごめんなさい、ちょっと手が離せなくて…別の方にお願いできますか?」



あくまで低姿勢で!
飲み会などを断るとき
「お誘いいただきありがとうございます!本日はどうしても都合が合わず不参加でお願いします。」



あえて理由は言わなくて大丈夫です。
今すぐ返答できないとき
「少し考えさせてもらってもいい?今すぐだと判断ができなくて…」



時間稼ぎで使えます!
「優しさ=自己犠牲」になっていませんか?【うつになった体験談】


自己犠牲が続くと心身ともに壊れます



「相手に嫌われたくない」「迷惑をかけたくない」
そんな気持ちから、頼まれたことにすべて「YES」と答え続けていませんか?
その優しさが、気づかないうちに自分を追い詰めてしまう原因になっているかもしれません。
私自身、かつて職場でパワハラ気質の上司に何を言われても逆らえず、常に「大丈夫です」「やっておきます」と返していました。
本当は無理をしていたし、納得できないこともたくさんありました。
それでも「反論したら機嫌を損ねる」「評価が下がるかも」と思い、何ひとつ断ることができなかったんです。
最初は「頑張って乗り越えよう」と踏ん張っていたつもりでしたが、次第に体調に異変が出てきました。
朝起きられない、何も楽しいと感じない、食欲がない。
それでも仕事には行かなくてはと無理を続け、ついに心療内科で「抑うつ状態」と診断されました。


今振り返ると、「もっと早く自分を守る選択をしていれば」という後悔があります。
他人のために頑張る前に、まずは自分を大切にする視点を持つことが大切だと、身をもって感じました。
優しさは使い方で武器にも毒にもなる
優しさは、本来とてもすばらしい力です。
誰かを気遣ったり、困っている人に手を差し伸べたりできるのは、簡単なことではありません。
私自身、上司や同僚、友人どんな人にも「いい人でいよう」として、つねに気を配っていました。
すると自然と、「何を言ってもOKな人」という立場になってしまい、負担がどんどん増えていきました。
そして、それが大きな重荷になっていました。
「どうして自分ばかり」という気持ちが積もっていき、ついには人と接するのも怖くなってしまったことがあります。
今時間が経って気づいたのは、「優しさは選んで使うものだ」ということでした。
優しさは、自分の気持ちを大切にした上で、相手に届けるものであるべきだと感じたんです。
優しさは、正しく使えばあなたの魅力になります。
でも、使い方を間違えれば、自分を壊す刃にもなってしまいます。
そのことを忘れずに、これからの自分の優しさを守っていってください。
優しさがしんどくなる前に|自己犠牲を防ぐ3つの考え方


「優しい自分でありたい」「人に嫌な思いをさせたくない」
その気持ちはとても素晴らしいものですが、優しさが無理につながっているなら、一度立ち止まって考えることも大切です。
ここでは、自己犠牲にならずに優しさを保つための「3つの考え方」をご紹介します。
① 本心でやりたい(やるべき)ことか?
何かを頼まれたときや、人からお願いされたとき、まず自分に問いかけてみてください。
「私は心からこれをやりたい(やるべき)と思っている?」と。
断るのが怖くて、「嫌だな」と感じながらも引き受けてしまうことはありませんか?
そうした無理な優しさは、後からモヤモヤや疲れとして自分に返ってきます。
私も以前、友人からの誘いを断れずに、無理して出かけたことがありました。
帰ってきてからどっと疲れて、「あのとき、自分の気持ちを優先してればよかったのに」と後悔したことが何回もあります。
まずは、自分が心からやりたいかどうか。
その問いを、無視しないでください。
② 多少愛想がないくらいがちょうどいい
「優しくない自分」に罪悪感を持ってしまう方は、とても真面目で思いやりのある人です。
でも、人にどう思われるかを気にしすぎて、自分の気持ちを押し殺してしまっているのなら、それは本末転倒かもしれません。
大学時代、がさつ系な友人に



のっぽっていいやつだけど、面白みがないよね。
と言われたことがあります。
当時その言葉にかなりショックを受けましたが、「自分を押し殺すことで、個性まで殺しているのかも」という気づきにはなりました。
優しすぎて疲れてしまう人は、「多少愛想悪いくらい」でちょうどいいこともあります。
実際、自分をさらけ出す人の方が、周囲との関係も深まることもあります。
「多少愛想を悪くすること」は、本当に愛想悪くするとかではなく、自分の感情に嘘をつかないことです。
おそらくHSPの方は、どうしても相手を第一に考えてしまう癖があるので、「多少愛想がない」くらいのスタンスで生きてみましょう。



心が楽になると思います。
③ 自分が一番大切
誰かのために何かをする前に、まずはこう問いかけてみてください。
「自分、元気かな?」と。
やさしさを持つ人ほど、「自分を後回しにするのが正しいこと」だと感じやすいものです。
けれど、そのまま無理を重ねていけば、気づかないうちに心も体もすり減ってしまいます。
「満たされたコップからしか、水はあふれない」という言葉をご存じでしょうか?
これは、自分の内側が満たされてこそ、その余力で周りの人にも優しさを注げるという意味です。
心のコップに水が少ない時に、無理やり誰かに与え続けていれば、いずれ水がなくなります。
だからまずは、自分のコップを満たすことが先なんです。
そうすることで、あなたの優しさはもっと長く、もっと深く、周りの人を支える力になります。
自分を大切にすることは、決してわがままではありません。
まとめ:優しいことはいいことですが、自分には正直に


いかがでしたでしょうか?
今回は、優しさで疲れてしまうHSPの方へ向けて、自分を守る方法をご紹介しました。
- HSPの人が「優しすぎる」と言われやすい理由
- 筆者自身の体験談(優しさが自己犠牲になった話)
- 無理せず断るためのやさしい伝え方
- 自己犠牲を防ぐための3つの考え方
どれも、私自身が「もっと早く知っていれば楽になれた」と思う内容ばかりです。
優しいことは素晴らしいことです。
でもその優しさが「苦しみ」や「我慢」になっているのなら、考え方を変えるタイミングかもしれません。
これからは、「自分にもやさしく」することを許してあげてください。
NOを伝えることも、あなたの心を守るための大切な選択です。
あなたの優しさが、これからは自分自身を幸せにする力としても活かされていきますよう、祈っています。